fromLOVE - STEP4 -
part.3
すっかり飼いならされている黒猫は、さほど抵抗する暇もなく陥落し―――
「とにかく、話を聞いてください。言ったでしょう?悪戯電話じゃない限り、ちゃんとした説明ができるからと」
静かになったあたりで相手を解放した飼い主が手を離すと、ぱたりとその膝の上に倒れこんだ。
「逃げるより先に、こちらの言い分も聞いてくださいね」
「なおえの……いじわる」
こんなに力が抜けたら逃げようがない、と、黒味を増した目元で青年は恋人を睨み上げた。
怒っているわけではなくて、でも、何だかくやしくて。
キスくらいであっさり降参してしまうほど……こんなにもこの男が好きな自分に、泣きそうになる。
「ほら。こんなに私に毒されているのに、離れて体が保ちますか?キスだけでとろとろになっちゃうのに」
「ばかっ」
些か意地の悪い笑みを浮かべてにこりと問う男は、そんな中にもひどく色っぽい香りをまとっていて、青年は怒鳴り返しながらも体温の上がるのを感じていた。
実際問題として、この恋人と離れてしまったら自分は一週間と保たないと思う。優しくて甘いキスに飢えて、熱くて優しい腕に飢えて。穏やかなこの声に飢えて。
考えただけで切なくなる。
絶対に、おかしくなると思う。もうこんなにも、この男に慣れてしまった。
何だかやるせない気分になって、大好きな堅い膝に、ふええ、と顔を伏せると、穏やかな声と優しい指が髪に落ちてきた。
「高耶さん。もし今度また女から電話があったら、言っておやりなさい。直江は自分のものだから二度と近づくな、と。それでいいんです。私が浮気をしたら、その女と別れろと詰め寄っていいんです。……いや、しませんけどね勿論。
とにかく、あなたが身を引く理由なんてどこにもない。もっと欲張っていい。俺をあなただけのものにしてやる、っていうくらいの勢いでいいんです。
俺はあなたのものだ。勝手に間に割り込もうと言う人間がいたら、そんなものは蹴散らしていい」
髪を梳きながら静かに落とされる言葉はどれも強く青年の心を打った。
あまりくどくは愛を口にしない男が、ゆっくりと穏やかにではあるが、今、こうして確かな言葉をくれている。
素面で、自分はあなたのものだ、と告げてくれたのは、もしかしたら初めてではないだろうか。
「……なおえ……」
膝に爪をたてて拗ねていた猫は、その言葉を心の中で何度か咀嚼すると、ゆっくりと身を起こした。
もう機嫌は直っている。
「……いらっしゃい、高耶さん」
黒い瞳にまっすぐ見つめられた飼い主は、先ほどの自分の言葉に少し照れたような顔をして―――
自分の胸に懐くのが好きな恋人へ、腕を広げた。
そして猫は、大好きな腕の中へと飛び込むのだった。
一段落したっぽいにもかかわらず、まだ続く。
そして今回も見つかりましたね。(part.1〜2を読まずにここを発見してしまったお方はQ2、Q4のページにて探してみてください。)
このページはのろけすぎなので、やっぱり恥ずかしいです。てれてれ。
うっかりここを見てしまった男性の御方は、きっぱり忘れてやってください。世の同性カップルがこうであってほしいと血迷ったことを考えているわけではないのです……あくまで魁的少女漫画ラブなのです。
(↑今更ながら、言い訳。)
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