baby,baby!―――年末年始編 1/2の模様
「今日は忙しかったなぁ」
「そうですね。明ちゃんも疲れたんでしょう。ぐっすりですね」
元旦の日を元旦らしく初詣に過ごした三人家族は、二日はもう少し足を伸ばして、市の中心にある運動公園で行われていた餅つき大会に出かけたのだった。
むろん、よちよち歩きの明には餅つきができるわけではないが、直江が餅つきをするのを高耶の腕に抱っこされて見学することはできたので、彼女も大いに新年の行事を楽しんだのである。
大好きな『なー』が腕まくりして杵を上げ下ろししているのを、彼女はきゃっきゃっと声を上げて喜んでいた。そうやって随分はしゃいでいたので、帰宅するころにはぐっすりと眠りに落ちたのだった。
「安心しきった顔をして……本当にいつ見ても可愛い寝顔だ」
ベビーベッドにこんもりと小さな山をつくって眠る子どもを、男親二人はベッドの柵に手をついて飽かず眺める。
健やかに育っている子どもは、ふっくらした頬といい、柔らかな髪といい、見るからに元気で明るい空気をまとっている。伝い歩きを始めてからは、一時も目が離せないほどよく動き回るようになった。
親たちは、彼女が唯一静かになるこの寝姿を昼間と比較して愛しさを募らせ、また、健康に育っていることを感謝するのだった。
「……なー……」
ふと、赤ん坊が花びらのような小さな唇を動かした。
「……寝言?」
親たちは顔を見合わせて、笑いあう。
娘は今頃どんな夢を見ているのだろう。直江を呼んだのは、昼間の餅つきを思い出したのだろうか。
「そろそろ、私たちも寝ましょうか。明ちゃんの夢の邪魔をしてはいけませんしね」
直江は寝言で呼ばれた嬉しさを全面に表して、とけるほど優しく微笑んだ。
そっと伴侶の肩へ手を回し、撫でるようにしながら自分の方へ引き寄せたが、相手はそっぽを向いてしまう。
「高耶さん?」
「なんで直江しか呼ばねーんだよ。オレだってその場にいたのに」
高耶は娘が自分の名前を呼ばなかったことを拗ねているらしい。
「きっと、呼んでいますよ。ただ、聞き取れなかっただけです」
直江はそんな父親の姿に微笑み、拗ねている人の頬に軽くくちづけた。
ちょうどそのとき。
「……たー……」
二人の娘が、まるで頭上の会話を聞き取ったかのようなタイミングで、父親の名を呼んだ。
そして、呼んだ後はまた、幸せそうに夢を食む。
小さな手でぎゅっと拳を作り、くーくーと穏やかな寝息をたてる娘を、親二人は言葉もなく見つめた。
「……」
やがて二人は再び顔を見合わせ、そして今度こそ晴れやかに笑いあった。
1/9
随分と日を空けて、ようやく1/2編ができました。ちょうど一週間遅れですね……。
世間は疾うにお正月も明けて、お仕事や学校が始まっています。魁も本日より授業再開でした。
……そして、期末テストへと時はひた走る……(怖)
(M様、対のお話を別館に上げましたので、よろしければご覧下さいvv)